05. 七月十二日 クーダム・ツァイト紙 一面より抜粋

「リティヒ、クロイツベルグ、デッセンが参騎派遣を承諾」

 クルツリンガー伯爵ヴェスト内政総務局長は昨日、リティヒ、クロイツベルグ、デッセンの三市国が南西地方各市国に派遣された勅使に対し参騎派遣を承諾する旨を回答したと発表した。
 各市国の参騎の規模は明らかにされていないが、デッセンは長らく政治的中立を主張してきた市国であり、大規模な部隊の派遣を行うとは考えにくく、現地からの情報によるとリポック兄弟のどちらかを参騎として単独派遣する可能性が強いとのこと。
 クロイツベルグは二国時代からクルツリンガーとの結びつきの強い市国であり、ヴェスト内政総務局長が実質上の統治者となるクーダム朝で主導権を握るべく、参騎派遣を口実になるべく多くの人間をクーダム入りさせたいとの思惑があると見られる。
 軍事力に乏しく、経済的にもそれほど豊かというわけではないリティヒが参騎派遣に対し首を縦に振ったのは、国境を接する全ての市国がクーダム側についたためとみられている。自給資源に乏しいリティヒが交易を行う国境を失えば死活問題となることは明らかである。派遣される騎士は未定だがリティヒ代候テーゲルの養子が推薦されるとの見方が強い。
 これらの決定は今後の戦局に多大な影響を与えることが予測される。ザヴィーニ側は先帝時代の軍の体制をほぼ引き継いでおり、これらの装備に対しクーダムが対抗するには工房都市デッセンの協力が欠かせないためである。
 宮廷内部ではクロイツベルグからの人材の処遇が注目されている。遷都以来人材不足に悩まされているクーダム朝にとって、彼らは渡りに船の支援となるが、クルツリンガーの当主であるヴェスト内政総務局長が彼らを全て厚遇すれば宮廷内部はクロイツベルグに主導権を奪われかねない。また、皇帝家の正当な血筋を擁立するというクーダム朝の元来の主旨よりもヴェスト内政総務局長が二国時代からのアルハイム皇家との確執からクルツリンガー勢力を率いて反旗を翻し、独立を図ったとの印象を強める結果となるだろう。
 長引く人材不足と各市国の姿勢を問うことを目的に発令された参騎召集令だが…………

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