【ドラフト 】
- 劇場にて
「立派な馬だ。毛並みも申し分ない。鞍も上等、剣も銘入りの宝剣、マントも軍服も絹で、銀糸の刺繍がこれでもかと施されている。晩餐会の警護に出れば、シケた劇場の数倍の人数が数倍も煌びやかな装いで目の前を通り過ぎる。……それでもまだ足りない。俺の失ったあらゆる美しいものを俺はまだ全然取り返せていない」 「……それが、近衛に入った理由か」 - 北へ(03)
「あいつは陛下がどんなにあいつを気に懸けていらっしゃるかも知らず、俺がどれだけあいつを救ってやりたいと、そのためには手段を選ばないと思っているか分かろうともせず、そもそも自分が救われなきゃいけないことすら分からないまま、ジャンフェンに行かされるんだ。それで、自分はイーリヒトだから仕方ないと思いながら、一人凍えて死ぬんだ」 ミハエルはさめざめと泣き出した。